2019/02/02
と、言うわけで無事福永祐一がリヤドスプリントを乗り終えたので、ここで引退記念に書こうと思いますよ。
まず第一に、やっぱ今年は最後まで重賞勝てねーなあ…ってのが祐一らしさなのかなと。幹夫がブルーショットガンで神騎乗で驚きの勝利を挙げた印象が強いしもうちょっととんでもない展開になるかな?と思ってほんのり期待していたけど、引退行脚で重賞勝てへんのかいっ!(佐賀記念は勝った)とは思ってしまう。ただ、アンカツみたいに太って引退レースがないってのと比べると…とかも思ってしまうし、まあ無事やり終えたのは何よりです。
冗談はほどほどにしつつ、やっぱり祐一を見続けてきた人間としては、怪我無く最後まで走り終えてくれるってのが何よりも重要だった。何せ伝説の父福永洋一が落馬事故で大変なことになったし、まして祐一自身が既に大きな落馬事故をしている。こんなことは競馬ファンなら当たり前のことだけど、やっぱり最後までこういうことを言えるのも、無事だからこそ。最後にリメイクで外からジリジリとなだれ込んできたのは、不覚にもキングヘイローで何度も届かなかった若き頃の福永がフラッシュバックしてくるところはあった。
キングヘイローと福永のコンビで自分が一番とんでもないなと思ったのはやっぱりスプリンターズS3着だなあ。当時はまだ年末有馬記念の前の一戦で、年末の馬場と日差しで何とも言えない雰囲気が好きだった。有馬の前の電撃戦で正直今でもこのスプリンターズSからの有馬記念(ホープフル無し)で年を締めくくるって流れが好きで戻してほしいなと思っているが…。
初の1200m戦で後ろからになって直線に入って画面外。あ~無理かなこれはと思っていてブラックホークが勝ったかなというところを大外から何か緑のめんこが突っ込んできてキングヘイローやんけ!と。この時の鬼脚は、上がり34.3でしかないので年末馬場での基礎スピード特化戦でのバテ差しでしかない。だけど、当時の若かりし自分としては強烈なインパクトだった。そして祐一とのコンビが一番キングヘイローの末脚を発揮できると思っていたのは間違いない(宮杯で善臣大先生に大感謝することになるが)。余談だが、実は自分が当時一番嫌いだったのがエアジハードだった。マイルCSの祐一は完璧に乗ったと思うし、これで勝てないのかなんやねんこいつ…と当時中学生の自分は素直に感じていた。
有馬記念での祐一のキングヘイローに乗りたい発言に関してはダービー制覇の時に多分語っているのでそんなには言わない。ただ、キングヘイローファンとして、キングヘイローと福永祐一はニコイチで、絶対に切っても切り離せない。余談だが騎手の無い馬ゲーに意味は無いと思っている。自分のことを他の人がどう思っているかは知らんが、少なくともこの時期の俺は福永頑張れしかなかったよ。
ダービーをワグネリアンで制してから、やはり騎手として2段ほど上の存在になってきたなとは思った。最近の福永は達観しているところも見えたし、まあできない部分はもちろんあるんだけど福永の競馬というのを自分で貫いていたと思う。賛否あるけどプロならそれでいいと。武豊にはなれないってのをどこかで良い方に解釈したのかな、というのが自分としては。ただ競馬の騎手としては武豊にはなれないってのを割り切れたと思うけど、それ以外の部分でどこかで豊を追いかけすぎているところはある。天才福永洋一の息子で天才武豊の座を狙う次世代エースという看板を背負い続けた環境がそうさせたのかな…とは感じる。
ここからは福永祐一叱咤激励文章に。福永祐一は福永祐一でしかないし、武豊は武豊でしかない。どちらも別個の人間で、魅力は各々別個にある。武豊は武豊というブランドを自ら客観視して作り上げてきた。その為に言動を研ぎ澄ましてきているし、そこは天賦の才だと思う。福永祐一は残念ながら、そこに対しての才能は皆無に近い。面白いことを言おうとして自分がニヤニヤしてしまう、容量を得ない長文台詞でお茶の間を静かにさせてしまう、『ユタカさん』のイントネーションを一般でも使ってしまう。正直、武豊に一番遠いのが福永祐一だ。追いかけるのは本当にやめた方が良い。
では、福永祐一を見続けてきた人間が感じる福永祐一の一番の魅力は?と聞かれると、それはとにもかくにもすぐに出てしまう表情にあると思う。彼は前述のとおり、恐らく武豊にかなり強い憧れがあったと思う。そのため、取り繕ってしまう部分、本来の福永祐一の人となりとなる魅力を消してしまっている部分が多分にあったと考えている。
自分が一番祐一だなと感じたときは、初めて日本ダービーをワグネリアンで制した時の福永祐一だ。あの時の福永祐一は色々なメッキが全てはがれて純真な福永祐一となっていたんじゃないかなと思う。半ば事実を信じられない部分と、ダービージョッキーとなって手に入れた新たな映像の鮮明さ、衝撃。力が抜けたというか、どこかふわふわしたというか。あの祐一を見たときに、凄く懐かしく感じたのを自分は鮮明に記憶している。あのときに、福永祐一にも武豊に負けないだけの強烈な魅力があると。
いろんな人間があってこそ。そもそもキングヘイローに対してのとんでもない思い入れが自分にとっては祐一の最大の魅力。当時はそういうものかな?とも思って見ていたんだけど、ここに来ても一競走馬に対してここまで執着できる騎手は世界広しと言えども多分福永祐一しかいない。
これも最近の話になるが、ピクシーナイトでスプリンターズSを制した時に、祐一が言った台詞が『やっとキングヘイローに恩返しできた』。ちなみに、この時は自分も贔屓目抜きにピクシーナイトに本命を打っていて、記事内にキングヘイローに恩返ししろよwって書き残している。そしてその後のこのコメントなので…まさか?とは冗談ながら感じたが、もちろん福永自身が一番強く思っていたことなのは間違いあるまい。この令和には少し縁遠い浪花節が彼の一番の持ち味だと思う。
豊はスマート(熱くないとは言ってない)、祐一は不器用だが情に厚い。それをキングヘイローファンならわかっていると思う。彼は墓場までキングヘイローで得た悔しい思い出を持って行くんだろうし、調教師になっても背負って生きていくと思う。そういう覚悟を持てる人だと。武豊に憧れて入った騎手人生だから、武豊の影響を受けるのは必然。だけども、もっと福永祐一の魅力を自分自身で評価してほしいと思う。キングヘイローファンとして、キングヘイローが没した後も福永がこうやって一緒に生きていく姿を見ると、とても幸せに感じられる。キングヘイローは良い相方に恵まれたんやなと。トロットサンダーやキングヘイローから競馬を好きになれたからこそ、今でもこうやって競馬をやって行けていると思う。
職人気質の大器晩成型。そのエネルギー源は人一倍の馬への想い。ひいき目なしに、不器用だが競馬への情熱は素晴らしいものがあると思う。それは調教師になってこそ更に花開かれるものだろうと。
ここまで来たら綺麗に終わるのが本来なら送り出す記事なんだけども、福永祐一を叱咤激励するうえで、最後は本人にとって耳の痛い話でまとめたい。見ているとは思ってないけど、恩返しの話もなんとなく気持ち悪いぐらい通じていた気がするので、どこかで届いたらいいなという淡い希望をもって。キングヘイローも良いけど、エピファネイア、ジャスタウェイも忘れんなよ…!
エピファネイアはあのジャパンカップが本来のエピファネイアだ。折り合いが全てではないことを理解して、バランスの良さを調教師になってからは追い求めてほしい。依頼する騎手に対して自由度をもって、もっと俯瞰して、バランス・リズムを重視して。産経大阪杯の負け方は今でも許さんからな!
もう一つはジャスタウェイの有馬じゃい!有馬は向こう正面からが勝負。中山内回りは向こう正面でのペースアップで動かなければそこからは手がない。ポテンシャルを秘めている馬は上がり切らないうちにポジションを上げて勝負を仕掛けないと厳しい。直線だけの競馬を中山でするのは絶対にダメ。あの有馬記念は自分は許せないし、キングヘイローのラストランに乗りたいと言っててもあんな騎乗じゃ4着は無い。キングヘイローのラストの有馬を乗れるつもりだったら、どこから仕掛けていく?悔いのない騎乗を今度は騎手に求める側になる。指示するからには理路整然と説明してほしい。
最後に、今でも福永のキングヘイロー京都新聞杯2着の気迫のこもった騎乗は忘れんよ。岡部が何と言おうと俺はあの福永祐一が好きで好きで仕方がない。本来の福永祐一の一番の魅力はそこだと思うよ、間違いない。情熱を持って事に向かえば万事上手くいくと思う。隠す必要はない。彼は情の人だと思う。福永祐一の調教師人生の成功を祈念して、駄文を終えたいと思います。今まで本当にありがとう、本当にお疲れさまでした。
(有馬は調教師で勝てよ…)