2019/02/02
エリザベス女王杯2019のレース回顧・結果
京都芝外2200m良
2:14.1 62.8-58.5 S^4
12.7 – 11.6 – 13.3 – 12.7 – 12.5 – 12.8 – 12.3 – 11.6 – 11.5 – 11.4 – 11.7
展開分析・総評
クロコスミア3年連続2着の快挙…。
う~ん…今日は全体的に調子が悪かったがエリ女ぐらいは…と思っていたのでスカーレットカラーが伸びあぐねたのはショックが大きいかな。ただ、レースの流れとしてみたときに、恐らくこの標準馬場で究極レベルのトップスピード持続戦になっていると思う。なのでロングスプリントのギアというよりはトップスピードの質を高いレベルで引き出せないとかなり難しかった…クロコスミア以外は、ということになる。クロコスミアだけが4Fで早めに勝負を仕掛けたことで分散してロングスプリントのギアで4F踏み続けた感じ。これは藤岡佑介のファインプレーともいえたかもしれない。まあ後は個別で分析するけど、個人的にはラヴズオンリーユーは勝てたかどうかはともかく、珍しくミルコが仕掛けで失敗したなという感じ。ほんと京都外回りのミルコは信頼度が一枚落ちるわ。まして今は全体的に調子が悪いからなあ。
2番手以降はクロコスミアがじわっと離れてヤバいな、という判断で恐らく4角辺りから仕掛けて速いラップを踏んでトップスピードに近い形で急な4角出口に向かっていると。俗にいう淀の外回り速いラップで4角出口突っ込むと遠心力で苦しくなる説がスカーレットには当てはまるかも。スカーレットは馬体増もあったと思うが個人的にはこの説かな。ただセンテリュオも外を回してそこそこやれていることを考えると…と色々とまだ整理し切れていない面もある。まあとりあえず一頭ずつ見ていきながらかな。
1着02ラッキーライラック(スミヨン)
好発を切ってそこからまずは外からくる各馬を行かせて無理はせずに好位の内目ぐらいで様子を見る。道中も決して前というほどではなくクロノジェネシスの後ろで我慢しながら3角に入っていく。3~4角で前のクロコスミアが離していくという流れで中団の内目から外にいったん誘導しつつも我慢しながら内を選択、直線で最内。序盤で最内の馬場を選択して鋭く3列目から抜け出し伸びてくる。L1でそのまま鋭く伸び続けてクロコスミアを捕えての復活V。
まず、レースが終わった瞬間にラッキーライラックが勝てた展開だったと考える必要があるなと感じていた。普通に考えるとあの位置からラッキーがそこまで長く脚を維持してくるというのはちょっと考えにくい。上がり4Fで46.2と掲示板で出たときに、恐らく2列目以降は相当速いラップを要求されていたので、内を通した馬が…というのが一つの考え方ではあったと。そう考えればスカーレットがラストで甘くなったことと整合性が付くので。まあ実際そういう感じだったと思う。スミヨンもスピードに乗った段階で外も一瞬考えたと思うんだが、また内に進路を切り替えて最短距離で速いラップを踏めるところを通せたというのは大きいだろうと。
またこの馬自身も早めに仕掛けてここ最近は反応が抜群に良い代わりにラストで甘くなってしまうことが続いていたと。それが後半特化でトップスピードの質も馬場を考えると究極レベルで求められたはず、それで最短距離を通せたのもあるにせよラストまで伸び続けたことを考えると、前に目標が必要なタイプだったのかもしれんね。石橋脩だと我慢しきれず早めに動いて抜け出して誰も前にいない状況でメンタル的に甘くなってしまったのかもしれんねと。父オルフェーヴルもメンタルの危うさが凄まじかったし、逸走したり凱旋門賞みたいに抜け出してから急に内に刺さったり。この馬も前に目標をしっかりと置いてやらないとだめなのかもしれんね。しかし色々噛み合ったとはいえ、スミヨンは流石やわ…。こんな末脚を引き出してくるなんて流石に想定できなかった。中山記念みたいにタイトな流れの中でしぶとくというイメージはあったが、この馬場で後半特化でここまで切れるとは。馬場自体は最低でも標準レベルで力が要ったと思う。その中で効率よくトップスピードの質を高められた、という点でパワー型のトップスピードタイプだったのかもしれんね。超超高速馬場だとロングスプリントタイプが効率よく運べるのとは対照的に、パワー型で力の要る馬場でも削がれないタイプと考えると結構しっくりくるかも。これを考えると案外凱旋門賞挑戦も悪くないかもしれん…というかクロコスミアもつれていってやってほしいわ。参りました。
2着06クロコスミア(藤岡佑)
まずまずのスタート、二の足が速く楽々とハナなんだが、外からラヴズがまさかの主張で、これを制してコントロールする。道中もペースをドスローに持ち込んで2馬身ほどの差で3角手前の登り。ここで強気にじわっと仕掛けて徐々に差を広げ、3角の下りでそのまま引き上げて4F戦に持ち込みリードを広げる。4角でも11秒半ばで進めて直線。序盤で3馬身ほどのリードをしぶとく踏ん張り2馬身半。L1で流石にちょっと甘くなってラッキーライラックに鋭く抜け出されるが2着は死守した。
オースミハルカが基本的にエリ女の代名詞だったんだが、これからはクロコスミアやね。3年連続2着は凄いわ…いろんな意味で。ただ、今回の2着は藤岡兄の面白い仕掛けがあったのは大きいと思う。もちろんスローのギアチェンジ戦でもそれはそれでよかったかもしれんが。おかげで来る馬が変わってしまったというのも多少ある。というかミルコのせいでもあるんだが。
ひとまずいえるのはこの馬だけがロングスプリントのギアで走り切っている。2番手以降に対して早めに仕掛けて分散することでコーナーで速いラップを要求させる競馬に持ち込んだ。これだとラッキーみたいに内で最短距離を器用に立ち回れる馬には絶好の展開だが、外から回さざるを得なかった馬にはそこで脚を使わせる…特に淀の場合は4角出口がかなり急でここで遠心力で外に運動エネルギーが行ってしまう(オルフェンの春天現象)ので、ロスもかなり大きくなる。そういう展開に持ち込めたのも2着に入れた要因にはなると思う。もちろんあの競馬になったらどういう競馬でもチャンスはあったと思うが、仕掛けを待っていたら来た馬は違ったかもしれない、という感じ。しかし力の要る馬場でゆったり入れたら何でもできちゃうし、これ有馬記念を本気で狙ってほしいわ。チャンスあると思う。
3着11ラヴズオンリーユー(M.デムーロ)
五分のスタートからじわっと出して先行策、ハナをも窺うレベルで進めるが、流石にクロコスミアを行かせて番手でコントロール、道中もクロコスミアを行かせて2番手で折り合ってと理想的に進める。が、3角手前からクロコスミアがじわっと引き上げていくのにこれについて行かない。4角ではさすがに引き上げないといけないので仕掛けて差を詰めながら最短距離を通して直線。序盤でかなりふらついて後ろに迷惑を掛けつつも最後までしぶとく踏ん張ってクロコスミアには少し迫るが3着まで。
これねえ、意外とミルコの騎乗ミスだと思うんですわ。今回はラヴズを切ってたから3着と微妙に来ちゃって難しいんだけど、客観的に見てワンチャンスあったと思う。クロコスミアが上げていくタイミングでしっかりとついて行かないといけなかった。結果としてL4で11秒半ばの地点で4~5馬身ぐらい開いてしまったのでL3で一気に仕掛けなきゃいけなくなって11秒前後のラップをここで踏む羽目になってる。今の淀は標準からややタフぐらいなのでこの馬場でトップスピードの質を引き出すというのはかなりのレベルのものを求められたわけで、そういう適性面が足りなかったと思う。
評価するといってもオークスで、あれが全体で流れた中での4F戦、最速ラップで11.4程度だったわけで、そういう競馬をクロコスミアが展開してくれているのにそこで何故攻めて行けなかったのか。L2でふらついたのも究極レベルでトップスピードに乗せて4角急コーナーから直線前半まで速いラップを踏むのに難しかったような感じもするんだよね。L1は盛り返していてこの辺を踏まえてももっと分散していればもうちょっとやれた可能性は高い。ラッキーが破格過ぎたので勝てたかまではわからんが、ミルコが良いころのミルコで仕掛けを怖がらずにクロコスミアの仕掛けについていくだけの胆力があれば恐らく2着はあったと思うんだよね、客観的に見て。素材面でももう少しロングスプリント~ポテンシャル寄りの良さを引き出してほしかったが、仕掛けが遅すぎてトップスピードのギアでの勝負に乗ってしまったこと。最短距離を通して噛み合っている中でこれなので、トップスピード戦ではやっぱりちょっと足りない気がするね。今回に関しては自分はミルコの騎乗ミスが敗因としては大きいと思うよ。本当に最近良くないから、盛り返してほしいわ。ルメールばっかりでも詰まらんし、スミヨンにやられたい放題されないでくれよ、スミヨン自体は嫌いではないがミルコの意地をそろそろ見せてくれ。
4着12センテリュオ(ルメール)
やや出負け、前半は無理をせずに中団の外目で入っていき、スカーレットカラーを意識しながらその後ろ。道中そこからドスローと見てすっとポジションを上げて気が付けば好位3列目の外。3~4角でラヴズを目標にしながら3列目の一つ外で進めながら、4角でフロンテアと共にラヴズに並びかけに行くところで遠心力で下がって3列目。直線でジリジリと伸び続け、L1までなだれ込んでの4着だった。
今回のエリ女の展開を分析して結果的に大体のことは腑に落ちたんだけど、そうなるとセンテリュオが4着に来たのが結構意外、ということになる。このセンテリュオもラッキーライラックと同じで力の要る馬場で効率よくトップスピードを引き出せるパワー型のタイプなのかなという感じはあるかな。力の要る馬場自体は適性がある馬で、メールドグラース相手に結構頑張った尼崎Sなんかも評価していたがいずれにせよポテンシャル戦だった。トップスピード戦でもやれているんだけど、ここでこの馬が4着というのが色々と競馬の難しさを表していると思う。
あえて考えると下鴨SがL3最速で3~4角で速いラップを踏む流れを外々から追走しても足を削がれずL1まで伸びてきていて、こちらはコーナーでトップスピードを維持するのが非常に得意なのかも?というのも感じた。スカーレットカラーはL3で速いラップを踏んで外々、遠心力が出口でもろに働いて難しい条件になって崩れたのが大きいと思っているんだが、この馬はそれがそこまで致命傷にならなかったのと、ルメールの縦の位置取りが良かったという面も含めての4着健闘なのかもしれない。
5着08クロノジェネシス(北村友)
五分のスタートから軽く促しつつ進めて好位の内を狙い、最終的にはフロンテアクイーンを前に入れての3列目で様子を見る。道中も3列目の後ろで我慢しながらの競馬。3角手前でクロコスミアが抜け出したことで3角の下り以降で2列目以降がペースを引き上げていく中で中団の内内。そのまま最短距離を通して直線に入ってくる。序盤で進路を外に誘導しようとしていたが、前のラヴズが寄れてきて進路が微妙。それでもスペースがあり最後まで追われていたが伸びは地味で5着まで。
直線でラヴズがものすごい勢いて前をカットしたのがメンタル的にどこまで響いたかだが、ひとまず展開からのテクニカルな分析で考えると、やっぱり後ろ過ぎたかなと思う。結局は離れた前を捕えに2番手以降が3~4角で動く意識を強めざるを得ない展開になった。それでこの馬としては前が仕掛けてからの仕掛けになったしロスなく運べたけど使える脚の絶対量はさほどでもないので加速性能も活かせない、各馬が出し切りやすい展開になってしまうと素材面で足りなかったかなという感覚かな。序盤でフロンテアの位置が欲しかったかな。まあそれでもここまで仕掛けが早い展開に特化(パワー型のトップスピード持続特化戦…ロングスプリントよりももう一段上のギアの連続戦という感じ)しちゃったからね。こうなると後半の総合力(ギアチェンジ、瞬間的なトップスピードの質、TS持続力のバランス)で勝負したいこの馬としてはギアチェンジが使えない状況で3列目から差すには素材が足りなかったと思う。総合力タイプは何かに特化した流れには弱いってのは結構あるけどそれが当てはまってしまったかな。ラヴズより後ろになってしまったというのが3着も入れなかった要因にはなる。
7着16スカーレットカラー(岩田康)
五分のスタートから無理はせずに中団の外で進めていく。道中も中団の外目で我慢しながら、そう悪くない位置で入る。ただ3角手前からクロコスミアがペースを上げて引き離すがラヴズは仕掛けないのでこちらも仕掛けを待つ。4角で急激に仕掛けたラヴズとともに3列目がペースを引き上げてその外から追走、脚を使って直線。序盤では踏ん張れたがL1で失速、伸びあぐねて7着完敗。
ん~まさかエリ女でオルフェの春天パターンとなるとは思わなかった。エリ女は基本的に全体の仕掛けの意識が遅くなりやすい傾向ではあったのだが、それを藤岡の早仕掛けで3~4角で分散する競馬になった。ただ、これ自体は11秒半ばなので本来ならばこれで外を回したからといってそこまで大きくは影響しないはず。問題なのはこのラップと2番手のラヴズが踏んだラップが恐らくかけ離れていたというところにあると思いう。コーナー地点なので判断が難しいが、残り3Fのハロン棒の地点では5~6馬身ぐらいの差、そこからラヴズが仕掛けたことでここで前との差を詰めてきて直線となる。入りの段階では2馬身半ほどまで詰めていた。まあこの辺は目視なのでざっくりと3馬身ちょっととしてみてもレースラップよりL3地点は0.5速くなる。
つまりラヴズは推定でL3の4角地点で11.0に近いラップを踏んでいるということになると。ラヴズはこれを最短距離で通せているし、ラッキーライラックも最短距離。一方でこの推定11.0の地点でスカーレットカラーは3頭分外とかなりロスがあった。4角出口は急でスピードに乗っていればそれだけ遠心力が働きやすくなるし、外を回して押し上げようとすれば内の馬よりもスピードに乗せていく必要があると。今の淀は決して高速馬場ではなく標準ぐらいの馬場。11.0前後を引き出すのは決して楽ではない上にコースロスがあって遠心力が働いて。ここで恐らく筋力的に無理があったんじゃないかなと。いわゆるオーバースピードに近い状態に陥ってしまった可能性が一番高いと思う。
もちろん、+14kgがどう響いたのか、否定することはできないと思う。個人的には多少増えているぐらいは問題ないと思っていたが、結果的にダメだったわけでね。ただ、このエリ女は多分思っているよりも相当トリッキーな流れになっていて、4角での内外がかなり明暗を分けていたと思う。距離の可能性ももちろん否定はしないが、いろいろなことを考えられる中でも展開的にかなりトリッキーでL3地点で前を追いかけながら外から押し上げるというのは京都外では一番難しい状況。結果的に3~4角までに縦横最低限どちらかは良い位置にいないと難しい競馬になっちゃったと思う。縦も横も悪いポジに嵌ってしまって結果として4角が魔のゾーンになってしまったように感じるけどね。力負けする馬ではないと思っている、というのもあるが個人的には4角が最大の敗因かなと。3~4角で2列目以降もある程度ついていってくれていればまた違ったかもしれんが、2番手以降が3F勝負に特化しすぎた。2F戦ならL3がそこまで速くないので外からでもいいんだけどね…噛み合わなかったと思う。
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因みにこのアーモンドアイが敗れて波乱となった前走、安田記念を鮮やかに的中させた、この予想家をご存知でしょうか?