2019/02/02
天皇賞春2019のレース回顧・結果
京都芝外3200m良
3:15.0 59.8-76.7(12.78)-58.5 S^1
12.9 – 11.5 – 11.6 – 11.6 – 12.2 – 12.2 – 12.5 – 13.8 – 13.3 – 12.4 – 12.5 – 12.3 – 11.7 – 11.6 – 11.0 – 11.9
展開分析・総評
天皇賞春の回顧だけ先出しします。ツイキャスは月曜22:00から、月曜分の予想はやや縮小しますが予定通りやります。よろしくお願いします。
雨の影響があったので読み切れない部分はあったが、恐らく普通の高速馬場ぐらいではあったと思う。極端な高速馬場ではない、という感覚かな。ペースは1.3でややスロー、1~2角あたりで息が入っていてそこから向こう正面でじわっと加速して。そこから3~4角で11.7-11.6と11秒台半ば、そこから直線前半でもう一段の脚を要求された。取り付くチャンスはあるといえばあったが、前半がそこそこ流れているので前半~中盤である程度分散されているし、基礎スピード面もそこそこ求められている。そのうえで後半も徐々に加速して4F戦気味からL2でもう一段の脚を要求されたということになる。総合力を問われているが、その中に前半の基礎スピード面や後半のギアチェンジや4F戦の中でポテンシャル面もという感じかな。
1着10フィエールマン(ルメール)
やや出負けして後方からの競馬となってしまう。序盤はまだ後方に近いところで進めながらグローリーヴェイズの後ろでスタンド前に入ってくる。そこで1度目の選択となる押し上げ、直線地点でしっかりと押し上げて中団に取り付いていく。そのまま無理には押さえこまずに1~2角も外、この辺りで前がペースダウンしたので前のパフォーマの外から並びかけてさらに様子を見る。この辺りから前も少しペースを上げているのだが好位の外からキープしつつ3角。3角で2列目の外まで進めているがまだ手綱を引いてコントロールしながらスピードを上げていく。4角外からグローリーが勝負に来たところで仕掛けて直線。序盤のギアチェンジ戦で2列目を突き放すが意外とグローリーに食らいつかれる。しかしこれをL1でしっかりと振り切って菊花賞馬の威厳を示す勝利。
グローリーがこの展開でここまでギアチェンジとトップスピードの質でくらいついてきたのは意外だったが、エタリオウにここまで差をつけたのだからグローリーを評価すべきだろう。この馬は正直に言うとまだこういう展開でどこまでやれるかというのは多少未知数ではあった。ただラジニケ賞でもタイトに流れて消耗しても鋭く脚を引き出せているのもあったし、AJCCでもそうだが負けパターンは届いていない形で後半の素材面ではまだ底を見せていなかった。そういう馬の底知れなさを信じてみる、というのも重要だったかな。1番人気なんだけど、個人的にはここで本命をきっちり当てられたのは凄くうれしい。
この馬の良いところは全体で流れてもペースが落ち着いてもやれているところでギアの上げ下げが非常にうまい。ただ今回はゲートが甘くなり他が思ったより全体的に上手くスタートを切ったので後方からとならざるを得なかった。ここでちょっと嫌な予感がしたがルメールを信頼していたのもある。スタンド前ではまだペースがそこまで落ちていないがそこで動く意識をもってスピードに少し乗せながら1~2角でコントロールしつつ様子を見て前が落としたので外から徐々に好位。3角までにグローリーの前をとったことが結果的には勝敗を分けたと思う。実際スタンド前に入ってきた段階ではグローリーの方が前にいたからね。この辺りが今のルメールを信頼しやすい要因になるし、ルメールが化けた要因。ミルコの良いところ、豊の良いところ、ノリの良いところを見て色々吸収しているんだと思う。もちろん緩急がある所での押上げの部分もあるとはいえ、前半はそこそこ流れていたし、その中で押し上げながらでもこの瞬間的なギアチェンジを引き出せているように、前半の基礎スピード面や後半のポテンシャルといった部分を高いレベルで持ったうえでこの瞬間的な爆発力を引き出せる。こういう総合力の高い馬なら距離に拘らずどこでもやれるんだと思う。素材的に化け物というわけではないと思っているけど、完成度の高さは非常に高い。ゲートがもうちょっと安定すればなおいいんだけど、その点でも距離は2400以上はあって良いんじゃないかな。個人的には凱旋門賞適性は高いと思っているので、ゲートを出す練習をしていい位置を取ってくれればチャンスは出てくるかもしれんね。
2着07グローリーヴェイズ(戸崎)
五分のスタートから二の足良く楽に好位の中に入っていけそうな感じだったが控えて中団で進めていく。スタンド前で中団で我慢していたが、そこで外からフィエールマンに前をとられてその後ろを進めることになる。3角手前でフィエールマンが外からじわっと上げていくのでその外に出して仕掛けていく形で4角で並びかけて直線。序盤でそのままギアチェンジを引き出しフィエールマンとの叩き合い。しかしL1で甘くなって最後はクビ差の2着。
前半からそこそこ流れてくれたのは大きかったと思う。この2頭だけがこの流れの中でこの鋭さを引き出せたという評価で、3着以下はかなり離されている。この辺も恐らくだがちゃんと長距離の競馬になったことで、脚を使った馬たちは後半の余力をなくしていたということだろうと。グローリーヴェイズは恐らく全体的に分散したほうが良いタイプの馬なんだろうし、今回は雨の影響で極端な高速馬場ではない状況になったのも功を奏したかな。
ただ、もったいない。戸崎としてはやっぱり馬場が読みにくく何か有力馬が前で競馬をしてほしい、というような感じだったかもしれないが…結局3~4角で外から勝ちに行ってしまうとどうしてもトップスピードに乗ってからのL1の甘さは出てしまっているからね…。フィエールマンに前をとられてしまった時点でやっぱり勝ち切るのは難しかったと思う。フィエールマンに外から取りつくのに脚を使っている。こういう本当に良い脚は一瞬だけど流れた中でも引き出せるタイプの馬ってのは妥協せず前をとらないといけない。まあそれでも、正直に言えば戸崎のイメージだともっと後ろで我慢しているかもとも思っていたので、よく3角で動く判断を下せたなと。その点では幾らかはよくなってきていると思う。もともとそんなに期待していないからかもしれないけど。ベストはフィエールマンの競馬なんだけど、まあ4角であの位置で2列目の仕掛けは待てる競馬ができているからね。この馬が凱旋門賞でとなるとTS持続が甘いのでフィエールマンと比べるとちょっと難しいかな。
3着08パフォーマプロミス(北村友)
まずまずのスタートを切って促しながら好位を狙っていくが、最終的には少し下げたがそれでも好位集団に近いところで進めていく。スタンド前では我慢してカフジプリンスの後ろで進めていたが、2角で外からフィエールマンが並びかけてきたので好位の中目で我慢しつつ前のスペースを詰めながら3角。3~4角でも好位の中目で進めてポジションを押し上げつつ2列目付近でフィエールマンの直後と理想的な入り方。序盤で追い出されるが前には離されエタリオウとの叩き合い。最後はエタリオウを内から交わして3着、小波乱を演出した。
面白いなとは思っていたんだけど、L2でかなり速いラップを踏まれてしまったからね。ここで太刀打ちできなかった辺り上位2頭とはかなり差があると思う。とはいえ、エタリオウに対しては好位中目で我慢で来ていたといってもL1で振り切れているからね。極端ではなかったが高速馬場の方がこの馬は合っているかもしれない。メンバー構成を考えても噛み合えばこれぐらいはできて良い馬。京都記念も馬場が悪い内を通せたが加速地点ではそこそこ動けていたし、今後もレベルや馬場次第では重賞を幾らか勝てそうかな。GIとなるとワンパンチ足りないが。
4着02エタリオウ(M.デムーロ)
五分には出ていたが二の足が遅く、無理はせずに最後方まで下げ切る。ただ序盤から単独の最高峰で少し離された状態でスタンド前。この辺りで縦長で追走でも苦しいかなという感じだったが1~2角で緩んでくれてここで脚を使わず少しポジション差を詰められた。そのままの勢いで向こう正面で押していってここでロンスパ追撃開始。3~4角でもフィエールマン、グローリーの直後まで持っていって直線。序盤で追い出されるが弾けるはずが弾けない。そのままラストはパフォーマプロミスとの叩き合いで見劣って4着完敗。
ミルコは最近よくない…この馬の適性を完全に見誤ったと思う。日経賞であの形で甘くなったのに何でロンスパせざるを得ない競馬を選択したのかだね。もちろん内枠でポジション取りが難しい馬だから、敢えて最後方から緩みで取りつくという選択を選んだこと自体は悪くないと思うが、それでも最序盤でちょっと不必要に下げすぎた。もちろん脚を使って甘くなるリスクがある馬だが、かといって後半で向こう正面から動いていってこの馬の鋭さを引き出せるというのは無理がある。ああなると向こう正面から4角までで脚を使っているわけでね。3~4角でレースラップでも11秒半ばを外から詰めていけば当然この馬も11秒前半ぐらいのラップを踏む必要が出てくる。3~4角でああいう形で取りついてしまうと本来爆発させたい瞬間的なトップスピードの質、そこからの持続力をMAXに引き出せない。だからこの馬のベストは長距離ではない、という見立て通りの競馬になったと思う。この馬に関してはダービーや神戸新聞杯が本質的な競馬をしていると思うし、トップスピードに乗ってからの持続力が売り。あそこまで後ろからになると進出が早くなるのでポテンシャルが求められる。そこで分散されても2段階の脚を使える馬がステイヤーで、この馬はそれができないから今のところはステイヤーではない、という判断かな。しばらくミルコは重要なレースでは信頼しないほうが良いと思う。もちろんどう乗ってもエタリオウにとっては良い条件ではなかったと思うから。少なくとも長距離適性という点では日経賞で底を見せていたと思う。
5着09ユーキャンスマイル(岩田)
五分には出てある程度は促していたがやはり岩田らしく無理はせずに後方にじわっと下げていって内を狙ってくる。道中もフィエールマンが動く中でこちらはじっとしていて特に動かず。向こう正面でペースがじわっと上がって各馬も追撃を開始する中で後方外目で3角に入る形。3~4角でも好位の外から押し上げながらエタリオウを追撃して直線。序盤で追われるが反応も甘いし少し走りにくそうな感じ。L1でも良いところなく5着まで。
ん~今の長距離は全体の流れを使ったレースになることが多いから、こうやって淀みがあったときに早めに判断が必要なケースだと岩田では対応できないね。最序盤からいい位置を取る意識が低かったし、動けるタイミングで動けない騎手は今の長距離界では基本馬の地力で勝つというのは難しいと思う。去年のレインボーラインみたいな感じで嵌ればいいんやけどね。正直このユーキャンスマイルも万葉Sの内容がいまいちで分散して良いタイプというよりは菊花賞やダイヤモンドSみたいなスローからのトップスピード特化戦の方が良い馬だと思うし。全体で流れて後半も後ろから早めに動かないととなるとそこで脚を使っちゃって良さが出なかったかな。菊花賞はそのレースだけでは距離適性を判断できないとはずっと言ってきたけど、明暗が分かれたのはまさに本質的な長距離適性の差だと思う。
10着12クリンチャー(三浦)
五分には出てそこから促しながらポジションを上げていこうとするが難しく中団の内に入り込むという選択をとる。道中も中団内目で進めながらじっと我慢しながら。向こう正面で少しペースが上がっていく中で中団の内目のままで3角に入る。3~4角で最内から追い出されているが反応いまいちで後方列、馬群の中を通す。序盤で進路確保で甘かったのもあるがそれでも馬も伸びてこない。ラストまで失速。
ん~追い切りでは力強さが出てきたしこれなら少し怖いなと思ったんだけどね…まあ騎乗も良くなかったにせよ、もうちょっとこの馬の片鱗ぐらいは見せてほしかったかな。ポテンシャル面で勝負したい馬なので内内で我慢してこの競馬だと3~4角でも上がり切ってないからね。直線での進路どりも甘かったし三浦もいまいちだったが…ポジションもこの馬場だとなかなか取れないし、難しかったかな。
11着05メイショウテッコン(福永)
まずまずのスタートから二の足良くハナを狙えるぐらい。促してヴォージュを行かせてコントロール、外のロードも競ってきたので3~4角で徐々にスピードを落として前にロードを入れて3番手でスタンド前。道中も前2頭を追う立場でそこまで離れず良い入り方で前に馬を置かずとも折り合って進めていく。1~2角でペースダウンしたので少し手綱を引いているが、この辺りからフィエールマンが徐々に詰めてきてリードが小さくなってくる。3角で前のヴォージュを交わして先頭に立つが、外からじわっとカフジが並びかけ、さらに外からフィエールマンらに一気に来られ、4角で仕掛けるのだが抵抗しきれず2列目に下がって直線。序盤で追い出されるがいい脚を引き出せず…そのまま失速した。
ルメールを褒めるべきなのは間違いない。仮にメイショウテッコンが良い競馬をしていたとしてもああなると勝つのは難しかったし、個人的には福永はこちらのイメージに近い競馬をしてくれたと思う。なんでこれでここまで下がってしまったのかがちょっと難しいところ…。前半がこれだと速かったのかなあ。ラジニケ賞は確かに厳しい流れで息を入れて再加速で勝っているけど、1800での話。2400以上では神戸新聞杯や日経賞、いずれもスローで後半に分散する形で結果を出してきた。個人的には今回はそこまで高速馬場でもなかったし、着差が開いているように直線に入ってくる段階ですでに各馬の余力に差がある状況だったと思う。となると前半1000がこの馬場でこの馬の基礎スピードを考えてちょっと速かった可能性を考えたほうが良いかもしれない。中距離と長距離では別の馬なのかもしれないなぁ…。福永の騎乗は今回は良いバランスで入ってくれたと思う。まあ1~2角で中弛みが起こったところで勝負に行くぐらいの気概も欲しいけど、そこまでは無理だろうと思っていたし実際余力がなかった以上どちらかというと前半に問題があると考えるべきだからね…。