2019/02/02
第98回 凱旋門賞(GI)出走予定馬展望
日程:2019年10月6日(日)
コース:パリロンシャン芝2400m
フィエールマン(ルメール騎手想定)
ついに今年も凱旋門賞の季節がやってきた。日本の総大将は天皇賞春で見事にGI2勝目を挙げたフィエールマンだ。前走の札幌記念は3着と敗れたがまさに前哨戦仕様。しっかりと末脚を発揮し順調な一歩目を踏み出したといっていい。長らく日本が取りつかれている凱旋門賞の呪縛、令和元年に日本の総大将が勇ましくロンシャンの長い直線で突き抜け、解き放つか?
※この記事はブログ無料公開対象です(凱旋門賞出走予定馬展望もやります)
ディープ産駒の中でも総合力が高く、とりわけペースが上がった中でも脚を使えてそのうえトップスピードに乗ってからも持続力が高い。また菊花賞はともかく天皇賞春のようにある程度流れ、ある程度4F戦と分散する中でも脚を使えるのが強みで、比較的ステイヤー色が強い。菊花賞でもあの形でギアチェンジをしっかりと引き出してきたし、個人的には合うタイプだとは思っているんだけど…あのエネイブルの強さを見せられてしまうとなあ。シャケトラ相手にちょっと苦しい形になって勝ち切れなかったというのはあるので、総合的に隙は無いけど海外の超トップレベル相手に?という不安はある。それでも日本馬の中で一番速いラップを踏める馬ではあるし、期待は持ちたい。
天皇賞春(GI)1着
京都芝外3200m良 13頭7枠10番
3:15.0 59.8-76.7(FA12.78)-58.5 S^1
12.9 – 11.5 – 11.6 – 11.6 – 12.2 – 12.2 – 12.5 – 13.8 – 13.3 – 12.4 – 12.5 – 12.3 – 11.7 – 11.6 – 11.0 – 11.9
まずは2走前の天皇賞春の勝ちっぷりを振り返っておきたい。全体のペースは割と流れたほうで、中盤で13.8と一瞬かなり緩んでいるものの前半は60秒を切ってきている。そこからの後半の4F戦からL2最速で11.0。2段階加速の形でL2で鋭く脚を使うことを要求されている。この感じは割とパリロンシャンでも傾向的に近いところはあるのでこれでL1で踏ん張れたのはいい材料。
10番枠から出負けして後方からの競馬となってしまう。序盤は後方からの競馬だったが1周目のスタンド前で徐々に外から進出、中団ぐらいまでは押し上げて進めて1~2角。ここでレース全体が一気に落ち着いて団子気味になる中で外からじわっと押し上げていく感じ。向こう正面でも掛かり気味に中団の外目で仕掛けを待ちつつ3角手前でじわっと進出。そこから2列目、さらに4角には先頭列に並びかけこれを抜き去り外のグローリーとのマッチレースに。そこからは猛烈なたたき合いで3番手以下を一気に引き離し、ラスト1Fでしぶとく前に出てクビ差の勝利を収めた。
菊花賞も後で触れるが、意外とトップスピードに乗ってからのL1の伸びが素晴らしい。もちろんそこまでの過程も良くて3~4角で分散しながら脚を使ってL2でもう一段という競馬ができた。まあこれはAJCCでも見せていたパターンだが、長距離で前半ある程度流れた中でのものというのは大きいかな。出負けからのリカバーも前半まだ緩んでいない中でのものだし、中弛み地点の1~2角でさらに取りつく形にはなったがそこからはコントロールしていた感じ。まあ凱旋門賞なら前半からそこまでタイトに流れることはレアケースだし、前半スローの段階でしっかりとポジションをリカバーできるかどうかが肝要だろう。特に3角の下りが来る前にいかに良い位置でコントロールしながら降りられるかどうかがカギになりそう。L1で踏ん張る能力というのはこのレベルだとかなり求められると思うので、3着以下をしっかりと千切ってきたというのは評価していいと思う。
札幌記念(GII)3着
札幌芝2000m良 14頭6枠9番
2:00.3(+0.2) 59.9-60.2 M
12.6 – 11.0 – 12.5 – 12.0 – 11.8 – 12.1 – 12.0 – 12.0 – 11.9 – 12.2
前走の札幌記念は本番前の調整という立ち位置で臨んだと思うし、3着と言えども内容的にはまずまずというところ。ペースは平均だったし淡々と流れた中ではやはり中団やや後ろまで。ただそこから外を回してしっかりと自分の脚を使えていたし順調だったといっていいだろう。もともと凱旋門賞とは求められる適性的に繋がりにくいので着順はさほど気にしなくていいと思っている。
9番枠から五分には出たが二の足が遅くやはり後方に下がってしまう感じ。そこから窮屈になって折り合い面で少し苦労しながら1角に入っていく。道中も中団やや後ろで外目を追走、2角過ぎ辺りではさすがに折り合っていて淡々とした流れで無理せず後方外目で3角に入る。3~4角でも前が淡々とという中で後方馬群の中を通しつつ4角で外々に誘導、中団からペルシアンナイトの後ろを通して大外。序盤でそこからしぶとく伸びてきてペルシアンナイトの外から差を詰めてくる。L1で内を上手く立ち回った2頭に対してジリジリと差を詰めて3着は確保した。
まあ、格好はつけたんじゃないかな。同期の有馬記念馬、ダービー馬が相手で外から正攻法で勝負してワグネリアンは捕えているし、立ち位置的に勝ちたかったブラストと違ってこちらは明らかに本番を意識した競馬をしてのものだからね。淡々とした流れの中でもこれだけやれれば十分だと思うし、凱旋門賞の場合は前半はもっとゆったりした流れになるから包まれなければもう少し良い位置を狙える。負けはしたけど適性的にはこの展開で完璧に内を立ち回ったブラストとの比較で0.2差、ラスト差を詰めていた。そんなに心配しなくていいと思う。
菊花賞(GI)1着
京都芝外3000m良 18頭6枠12番
3:06.1 62.7-64.2-59.2 S^3
12.8 – 11.9 – 12.5 – 12.9 – 12.6 – 12.4 – 13.3 – 13.0 – 12.8 – 12.7 – 12.8 – 12.2 – 12.2 – 10.7 – 11.3
菊花賞が面白いので振り返っておきたい。本来なら極端に緩い流れで直線だけの競馬なので難しいところなんだが、ロンシャンの凱旋門賞は場合によってはフォルスで動かず直線に入ってのギアチェンジ戦になることも多い。この菊花賞では難しい形からしっかりと加速ができていたという点を高く評価したい。
12番枠から五分のスタート、そこから押しながら追走しつつも序盤は中団馬群の中目ぐらいまで。スタンド前でコントロールしつつ徐々に前を窺い好位の中目で1~2角。向こう正面でもペースが上がってこない中で割と好位馬群の中で上手く折り合って進めて3角。3~4角でも2列目の真ん中で包まれて進路がない状況で進めて窮屈な状況でエタリオウに先に先頭列に抜け出される。1列後ろから直線でようやく進路確保するとここからぐんと加速。そのままL1で抜け出していたエタリオウをハナ差捕えての勝利となった。
個人的にはこういうケースの場合、一気にトップスピードまで持って行くのに体力を使う形になると思っている。エタリオウの場合は確かに3~4角でロスはあったが、その地点ではまだ12秒台なのでむしろ最速地点の10.7に向けて理想的に加速しながら入っていけたとみるべきだと思っていると。本来ならエタリオウが勝たなければいけない展開、というのはそういう根拠がある。それを待たされて3角ではエタリオウより前にいたのに4角ではペースが上がらない中で仕掛けが遅れて加速しにくい状況で2F戦。この形でエタリオウを捕えたというのはなかなかのインパクトだと思う。上位勢はトップスピード戦で手ごわい馬たちで、それを相手にしっかりと後手を踏みながら鋭くギアチェンジができたというのは欧州の、それもスロー団子でという形になりやすいロンシャンの凱旋門賞を考えるといい材料かなと。ここまでレースのセンスがあるディープ産駒ってのはあまり見たことがないし、凱旋門賞でもと思えるんだけどね。
凱旋門賞2019への展望
期待はもちろんしている。ただマカヒキやサトノダイヤモンドといったところが相次いで苦戦、別の馬になって帰ってくることを考えても、やはりディープ産駒の挑戦というのがどうなんだろうなというのはある。もちろんキズナはよく頑張ったと思っているが、フィエールマンがどこまで通用するかは少し悲観的な感覚もある。とはいえ、適性的には良いんじゃないかなと。ペースが遅い中でしっかりと馬群の中で折り合えるし、そこから抜け出すギアチェンジの性能が高いのでこれはパリロンシャンでは活きてくると思う。オープンストレッチでフォルスからの直線入りではばらける傾向にあると思うし、そこで目標を作れれば。
理想を言えばエネイブルマークが一番現実的。ゲートが上手くコントロールも上手いエネイブルは今回もレースを支配してくるだろうし、フィエールマンがエネイブルよりも前を取れる可能性は低いだろう。となるとやはりエネイブルマークが理想。エネイブルも要所の反応が素晴らしい馬なので、この直後で我慢できれば進路は確実にできると思う。エネイブルはハイペースでも強い馬なので流れたときにそのパターンだと少し不安はあるが、この辺は当日の馬場次第というところはあるかな。消耗しそうな馬場なら前半はあまり無理をすると脚を使わされるリスクも出てくる。まあ札幌記念の感じならばてなかったしそこに賭けて勝負してもいいとは思うけどね。いずれにせよ、今の日本のエースはこの馬だと思うし、どの程度戦えるか楽しみにしておきたい。できれば内すぎないほうがいいかな。
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